少し遠くなった帰路を急いぐ。

別に引越ししたわけではないから、自宅から十二支高校まで行くのは少しばかり距離がある。

でも、まぁいいんだけどね野球できるんだから。


















***7***
  
そして今日も



















「ただいまー」

「・・・あ、お帰り!」


玄関に入れば、すぐにおかぁさんがキッチンからやってきた。

そして私の姿を上から下までじっくりと観察する。


「・・・・何?」


「・・・んー・・やっぱりちゃんは男の子でもいけるなって思って!」


「・・・・・・・」

キャッと若々しい反応をする母を後目に洗面所へと足を進めた。


どこの母親が男装した娘を見て顔を赤らめるんだ・・・!




「・・で、今日はどうだったの? ばれなかった?」


手を洗っているとまたまた出現する母。

その顔は興味津々といた感じに輝いている。


「んー・・ばれなかった・・・と思うよ」


「そっかー・・ばれなかったのか・・・」


なんだか母ががっかりしているように見えるのは気のせいだろう。


「でも、ちゃんと男子になれてたか微妙だな・・・。

 あぁもう、なんかフリッフリな服着ながら女の子らしくウフフッて笑いたい気分!うふふー!!」


口元に手を当てて似合わない女の子らしい笑い方を勢い良くする。


・・・・あれ。私、本当に男の方が似合ってない・・・?


鏡の中の自分を見ながらピシっと固まった。










キッチンに行き何時の間にかキッチンに戻っていた母の隣で料理の手伝いを始める。

これは私の日課。


「あのさー、なんか明日から野球部の合宿があるんだって」


ジャガイモをガシガシ洗いながら言うとおかぁさんはあらと声を洩らした。


「偶然ねぇ、お母さんも明日からお父さんの所に行こうと思ってたの」


「・・・・・え?」


ジャガイモを洗う手を止め母を見れば、母はフフッと恥ずかしそうに微笑んだ。


「いや・・ね? お父さんもそろそろ寂しいかな〜と思って」


勝手にアメリカへの出張を決め、単身赴任している私のお父さん。

お母さんはお父さんが独りで出張を決めたことに怒って、お父さんのことを口にしなくなった。

それが約半年前・・・。


「・・・そっか。そうだよ、行ってきなよ!」


でも知ってる。

お父さんは私達の環境を変えてしまうことを避けたくて独りでそう決めたことを。

お母さんはちゃんとお父さんのことを心配していたことを。


「・・・ありがと。 でも平気?家事は・・・お母さんより得意だったから心配ないと思うけど・・・」


ニコッと笑った後、うーんと考え込む母。


「や、平気平気! お母さんは安心してお父さんの所に行ってきて!

 それにお母さんが一人でアメリカまで行けるかが不安だよー」


「な、お母さんだってそのくらいできるわよ!」


アハハッと二人で思い切り笑った。

お母さんの嬉しそうな顔を見ているとこっちも嬉しくなった。






「あ、そうだ。の隣の部屋、あそこもの部屋として使っていいからね?」


夕飯のカレーを食べながら、母は言う。


「へ?・・なんで?」

「ふふ、見てからのお楽しみ!」

「・・・?」

カシッっとスプーンでカレーをすくって口に入れる。

ジャガイモが美味しかった。













「・・・・・・・・」


「ね?お母さんすごいでしょ? これでお友達が家に来てもばれないわよ!」


私の隣、昨日まで空き部屋だったそこは立派に一人分の部屋になっていた。

シルバーとブルーを基調としたシンプルで綺麗な・・・・・男部屋。


「・・・・お母さん・・・この部屋どうしろ、と?」

「え?決まってるじゃない!お友達が来たときはこっちの部屋を使うのよ」


えっへんという表情の母に私は何もいえない。

いくら男の子がほしかったからって・・ここまで・・・。


「・・・ま、いっか。 ありがと、おかぁさん。友達呼んだら使うよ」


呼ばないと思うけどね。

でもこの部屋の感じ好きだから、まOKってことで。


母は嬉しそうに笑った。




















「合宿って・・・男の子ばっかりなんでしょ?」


朝、トーストをかじりながら荷物の忘れ物をチェックしていると、母が来た。


「むぅ・・? ほぅだお(そうだよ)?」



心配しているのかな?と思って母に振り返ると、




「かっこいい彼氏つくってきなさいよ!」


ニマニマしていた。































ミスフルのめんばーがでてない!!
ヒロインと母のキャラ設定みたいなお話でした。(ぇ


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