「ふーん・・・なかなかいい部屋じゃん!」
「本当っすねー!先輩ッ♪」
「うるせぇYO、猿野!から離れRO!!」
「・・・・」
「・・・賑やかになりそうッすね」
***10***
禁句。
厳選なるアミダクジの結果、
天国、冥、虎鉄、子津、そして俺の5人が同じ部屋になった。
感想、とてもうるさそうだ。
「先輩ー!浴衣着ましょうよ、浴衣!」
荷物を置いてから、窓の外を眺めていた俺に猿野が勢いよく話しかけてくる。
というより、さっきから何かとちょっかい出されているんだが・・・。
「浴衣? いくら今日は自由だからって・・・いいのかな」
「いいじゃないっすか!ってかもう、皆着てますよ」
え?と部屋内に目を向ければ、
「・・・!!!」
そこに広がるのは、いかにも男子部屋という光景。
そう。
皆、お着替え中。
「ちょっ!?ちょちょッ・・・え、あの・・えぇ!?」
ガターンと大きな音を立て、椅子から後ろに落っこちる。
だって・・だって!!
いくらなんでも、俺はいちおう女でして・・・!!
「先輩!? 大丈夫っすか!?」
心配というより、驚いた顔の猿野が俺を覗き込む。
・・・やばい。
「だだだっだいじょーぶ! ちょっと、おトイレ行ってまいりますぜ!!」
ダッと猿野の脇をすり抜け、部屋の中を駆け抜け、部屋を出る。
視線はばっちり真っ直ぐ前だけを見ていた。
「・・・・どしたんDa?の奴」
「・・・おい馬鹿猿。お前に何したんだ」
未だ、上半身裸の二人はの出て行った扉と猿野を交互に見つめた。
猿野はただ呆然と、扉を見つめている。
「いや・・・・全然わかんねぇっす。 ってか何にもしてねぇつの、コゲ顔が」
「・・・・・びびび、びっくりした」
でもこれから合宿なんだから慣れなくちゃなんだよな。
顔赤くなんてしてたら、どう思われるか・・・・。
・・・うわっ、絶対女だってばれちゃうじゃん。
もしくは・・・男好き・・・。
一人もんもんと悩みながら、浴衣を片手に座り込む。
「・・・どうしよー・・・」
「何が?」
突然の声。
聞いたことのない声。
俺はすぐに顔を上げた。
「・・・・誰・・ですか?」
そこにいたのは長身で目元に赤いラインを入れた、他校生。
八重歯と黒目がちな目が印象的だった。
「御柳芭唐。華武高生。・・・おまえ・・噂の新入りだろ?」
すっと俺に手を伸ばしながら、何がそんなに楽しいのかニヤリと笑っている芭唐。
「・・・・噂になってるのかは知らないけど・・・新入りになる、予定・・」
少し躊躇ってから、素直に芭唐の手を借りて立ち上がる。
身長差が・・痛かった。
「・・・あんた・・ちっさ」
「!?・・な、なななんですと!?人が気にしてることをさらっと・・!!」
「ククッ・・わりぃわりぃ、気にしてたんか。・・・おチビ」
案の定、身長のことを言ってきた芭唐を睨みつけながら、最後の一言にはさすがの俺も切れる。
「お・・・おチビ・・? 俺の名前は!!覚えとけぇ・・ばかやろぉ・・!!」
途端に何故だか、ぎょっとする御柳芭唐。
何でそんな顔してるんだよ?
嫌なこといわれたのは、俺だぞ?
「な・・泣くんじゃねぇよ!!こんくらいで・・・女かてめぇは!?」
「は・・?泣いてなんか・・、・・!!」
やっべ・・・!!
興奮しすぎて泣いてるよ、俺!!
泣き虫は卒業したはずだろ・・・!?
グシグシと手の甲で目を擦り、顔を隠す。
「泣いてなんか・・ないからな・・! もうどっかいけよ・・・」
「・・・ッ」
突然、頭を撫でられたのが分かった。
大きい手で、わしわしと不器用に。
「悪かった・・。今のは俺が悪かったよ、先輩」
「・・・へ?先輩?」
芭唐を見上げ、鼻をグズッと啜る。
芭唐は少しだけしゃがんで俺と視線を合わせた。
「そ。俺一年の御柳ね、よろしくちっさい先輩」
「ま、また言ったな!?・・・こんにゃろ!!」
完全ちびっこ扱いの芭唐に飛びつき、お返しと言わんばかりにガシガシと頭を撫でる。
「うわッ!?・・な、おい!?」
「お返しだー!!生意気な後輩、芭唐め!おりゃー!!」
「ただいま・・・」
「お帰り・・ってどこ行ってたんだよYO!?」
「おい、髪の毛・・・何があったんだ・・?」
部屋を飛び出して数十分。
帰ってきたは、髪の毛ぐしゃぐしゃ、制服ぐしゃぐしゃ。
そして、明らかに疲れた顔をしていた。
「いやいや・・!!ちょ、ちょっと猫とじゃれてきたってゆーか」
「「「猫ぉ!?」」」
「あはは・・?」
苦笑しつつ、部屋に入れば皆は既に着替え終わっていた。
内心・・・ホッとする。
「あ、じゃ、じゃあ俺も浴衣に着替えようかな〜」
浴衣片手に、学ランの上着を脱ぐ。
・・・・・
あ。
ここから、どうしよう。
さらしの上から包帯巻いてるけど・・・ここで着替えるなんて、いくらなんでも、ねぇ。
「「「・・・・・・・」」」
学ラン脱いでから固まっているを、見守る四人。
「・・・な、なんで皆しての着替え眺めてんだかNa!?な、犬飼」
「そっ・・すね。おい馬鹿猿、凝視しすぎだアホ」
「だって先輩の生着替えだぜ!?俺は見たいね!!先輩が男だろうと!なぁ子津?」
「え!?ぼ、僕っすか!?え、あの・・・・・・見たくないって言ったら嘘・・・す・・ね」
顔を真っ赤にしている子津に腕を回し勝ち誇った顔の猿野。
顔を見合わせる虎鉄と犬飼。
と、そんな時。
「なぁ」
の声が響いた。
四人はを見る。
「・・・俺、浴衣の着方わかんねぇんだ。誰か一人だけ・・手伝ってくれない?」
訳が分からない、話になってしまった!!
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