透き通るような青い海には私の長い黒髪と、ソラの短い茶色の髪が、ゆらりと広がっている。

波に合わせて揺られるまま右に左に上に下に。

肌を焦がすように照り付ける太陽の光に負けて、二人の瞼は閉じたまま。



「あっついなぁー・・・・・・」


「海はまだましだって」


「・・・・・うん」



お互いが流されて離れていってしまわないように、私の右手とソラの左手は揺らめく水の中で、ギュッと握られていて、冷たい水中で触れているところだけは熱をもっていた。

なんだかそれが、とても、心地いい。



「・・・ん。随分流されて来てる・・・」


「えぇ?・・・んぁ、眩しい。・・・本当だ」



クイと首を上げてきょろきょろ見渡せば、なんとなく想像と違った方向に確認できた海岸。

ソラも眩しそうに目を細め、きょろきょろとした後、言葉を漏らした。



「どうする?そろそろ・・・戻ろうか?」


「んー・・・んん」


「それどっちだよぅー」


「だって・・・戻るの勿体無いなぁって」


「え?」



グイと繋いでいた手に力がこもり、水に浮遊していた私の体は浮き輪ごとソラに引き寄せられた。

トンと浮き輪と浮き輪がぶつかり、水が、腕に少し飛ぶ。



「折角、と二人きりなんだもん。どーせ島戻ったらリクが待ってるし!」


「あははっ、確かに!」



口を尖らせるソラが可愛くて、私は思わず笑った。

自分より一個下のソラは子供っぽく見えたり、大人っぽく見えたり・・・コロコロ変わるそのしぐさは私の心臓を忙しくドキドキさせる。


未だ照りつける日光は熱くて、いい加減水に着いていない部分はひりひりとしてきた。

左手でくるくると水をかき混ぜる。



「ねぇ、二人で海に消えちゃおうか」


「何それ?」


の人魚姿、俺見たいな!」


「ソラえっちだー」


「男だもーん」



ソラといると心地いい笑いが耐えない。

それはリクといてもカイリといても皆といてもそうなのだけど、ソラのとはちょっと違う。

ドキドキが伴う。










不意にとても近くで聞こえたソラの声。

逆光に陰った端整な顔。

青い瞳が私の視線を捉えて逃がすことを、許さない。





「ぅ・・・・わ!!」






バッシャァアン!!









冷たい海の中に沈む、体。


ソラの手が握ってる腕が、熱を持つ。


ゆらゆらと体と反対に自由に浮かび上がる、髪。


優しく塞がれたように聞こえない、音。









差し込む光と、ソラと、私だけが、


この青い世界にいるみたいだった。










ちゅ、と唇に柔らかく熱が重なった瞬間、二人の体は光に引っ張られた。












「・・・・ぷはっ!!!」


「はぁ・・・っ!!」



水しぶきを立て、水面に顔を出すと、胸いっぱいに酸素を取り込む。

ソラの腕に引き寄せられ、首に腕を絡ませて抱きついた。

半ば必死だ。



「し、死ぬかと思った・・・!!」


「はは、大袈裟だって!」


「ホントだよ!ソラの馬鹿!」



ソラはごめんごめんと笑いながら、自分の浮き輪に片手で掴まり、もう片腕は私を支えている。

何度かシパシパと瞬きをしてから、



「でも」



・・・私はソラの頬にキスをした。



「!」


「ソラと・・・二人だけの世界、だった」



いつものツンツンした髪が濡れて、なんだか大人っぽいソラの目が丸くなった。

そしてカァァッと耳まで赤くなる。



「・・・・・やっばぁ・・・、可愛すぎ!!」


「うわぁっ!!溺れる!!」

















この広い広い世界で、


僕達は二人だけの世界を見つけました。


青く、青く、透明で、


溺れるくらい、溺れたいくらい、そこは愛しい。














――愛しき青い世界で、君とキス。
















あぁ、この腕を離したくない。



























( 綺麗な海に浮き輪で浮かびたい・・・。

  拍手ありがとうございました!)