「うに。この子がちゃん?」


「そう。この仔猫ちゃんがあたしのちゃん」


「ふーん・・・。僕様ちゃんすっごく気に入っちゃうかもだよ。・・欲しいな」


「だーめ、ちゃんはあたしのだ。・・・そーだ、日替わりにするか?」




















の友達
























広くて、高くて、大きくて。

いかにも高級そうなマンションの一室、コンピュータのコードが張り巡らされた部屋。

美人さんと可愛い子が、怪しい会話を繰り広げています。



「えぇっと・・・潤さん?」


「あっと、ごめんごめん。こっちは玖渚友、いーたんのお友達だ」


潤さんは、コンピュータに埋もれるように座っている、小さな蒼い髪の女の子を手で示す。

“玖渚友”と呼ばれたその子は、ぺこりとお辞儀をする。


「初めまして、ちゃん。僕様ちゃんのことは友って呼んでほしいんだよ」


「は、初めまして・・・友、ちゃん」


私の言葉に嬉しそうに笑う友ちゃんが可愛かった。



「よし!これで友とちゃんはお友達だな、よかったよかった!」


ニッと笑いながら、私の手と友ちゃんの手を握らせる潤さん。

私は首をかしげる。

不満なのではなくて、純粋に疑問に思ったから。


「あたしは仕事でまた出かけなきゃなんだ。だから友のこと頼んだぜ。どうにもこの《うに》はヒッキーだからな。

 いーたん以外の“お友達”も必要だと思ってさ」


ちゃんなら大歓迎なんだね。いつでも僕様ちゃんのとこに遊びに来て・・・いっそここに住めばいいよ?」


「えっ、あ、・・・ありがとう!でも、」


話しの展開の速さに少しばかりついていけないお馬鹿な脳みそ。


でもはっきりと感じること。


それは、

出会ったばかりの私になんで、こうも皆優しいのだろう・・・・ということ。





「・・・・・。ありがとう・・ございます。潤さん、友ちゃん・・・」




なんだか泣きそうになるのをグッと堪えて、




「私・・・!!いつかきっと、恩返ししますからっ!」





思い切りの笑顔で、叫ぶように宣言した。

いつかきっと、私が皆を助けたい。

それは、ただの私のエゴかもしれないけど。




「あはは!ちゃんやっぱりかぁわいい!!」


「・・うわっ、ちょ!!潤さん!」


「僕様ちゃんもちゃんぎゅうってするんだよっ!」


「・・友ちゃんまで!?・・・あはは、ははっ!」



潤さんの長い腕と、友ちゃんの小さな身体に挟まれて、なんだか妙に可笑しくなって笑えてきた。

・・・嬉しくて、笑えてきた。




「あは・・・う、わぁ・・っ!?」


「うにっ」


「おぉっと」


そのまま床に転がって、何ともいえない間抜けな姿。

それでも、すごく楽しかった。










「・・・・何をやってるんですか」



「・・・あ、いーくん」


「いーちゃんだ!久しぶりっ」



近くの壁に手をつき、冷めた目でこちらを見下ろすいーくん。

いつからそこにいたのか、切らせた息を整えるように溜め息をついた。



「遅かったじゃん、い・ぃ・たん」


語尾にハートマークをつけながら、潤さんは床に片肘をつけてセクシーなポーズのままニヤリと笑った。


「これでも急いで来たんですよ。・・こんなことするなんてやっぱり哀川さんの仕業でしたか」


「潤って呼べって言ってるだろ。ま、これであたしの役目はお終い」



スッと綺麗に立ち上がり、潤さんはいーくんの頭をパシパシと軽くはたいた。

そして私と友ちゃんには聞こえないくらい小さな声で何か会話をしている。


ちゃんをちゃんと守れよ、戯言遣い」


「・・・どういうことですか」


「何か嫌な予感がする」


「・・・・・・」



「それじゃーな。ちゃん、またお姉さんと一緒にドライブでも行こうな」


潤さんはひらひらと手を振りながら、笑った。


「あ、ありがとうございました、潤さん!」


私はぺこっとお辞儀をした。

潤さんは世界一かっこいい女性だと思った。




そして、潤さんは出て行った。

仕事だと言っていた。







「・・・・じゃ、ちゃん、帰ろうか」


いつのまにか私を後ろから抱きしめているいーくん。



「ひっ!!い、いーくんいつのまに!?」


「駄目なんだよ。ちゃんは僕様ちゃんと一緒に住むんだもんね」


「そんなこと聞いてないぞ、友」


私の手を握りながらぷぅっと膨れる友ちゃんが可愛らしい。


「言ってないもん。いーちゃん帰っていいよ」


「駄目。ちゃんがいない家なんて帰っても意味ないしね」


「・・・ちょ、ちょっと」


言い合う二人に挟まれてる私は、仲裁に入った。



「あ、えと・・ごめんね、友ちゃん。今日はいーくん家に帰るね」


少しいただけだけど、あんなに狭い部屋だけど、

いーくんの家が私の居場所になってきていること気がついた。



「・・・そっか」


シュンとなる友ちゃん。

そんな友ちゃんにキュンとなる私。


「で、でも!またすぐ来るよ!私と友ちゃんは友達だもん」


思わずギュッと友ちゃんの手を握りしめれば、嬉しそうに瞳を輝かせた。


「友。友って呼ぶんだよ。僕様ちゃんもって呼ぶから」


「・・・友、友!・・友すごく可愛い!!」


いーくんを弾き、ぎゅうっと友を抱きしめる。

友は私より少し小さくて、腕の中に納まる。


「うに、の方が可愛いんだよ!」



































「友って可愛いね」


帰り道、みいこさんから借りたという車に乗っている。

いーくんが運転をできる、というのが何だか意外だった。


「・・・僕と同い年だよ」


「・・・・・えぇ!?」


驚きのあまりいーくんを見れば、いーくんはフロントガラスの向こう側を見つめたまま、頷いた。


「・・・・え、てっきり私より年下かと・・」


だって私より小さかったし、でも・・今から思えばあんな難しそうなコンピュータ遣いこなしてるんだよね・・・。

ふぅっと溜め息をついて、座席に深く座る。


「見た目って、当てにならないね」


「・・・ついでに言うと、哀川さんはちゃんより年下だよ」


「えぇ!?」


「嘘だよ」





































うわわわ、久しぶりすぎる更新!
そして戯言本を読み返さないと、皆様の口調やら性格やらが大変なことに・・・!
これを気に、戯言本全部買い揃えたいな・・・。