うーんと、えーっと・・・。
なんていうか。
・・・京都って恐ろしいところなんですね。
お兄さんの見分け方
「・・・あの、本当すみません。駅の場所聞いてすみませんでした。なんかもう話しかけちゃってすみませんでした!!」
どこをどう間違えてか、私はとても危ない状況です。
そこら辺にいる人に道を聞くことはもうしないと心に決めました。
周りは皆敵!まさにRPG!
「かははっ!そんな恐がるなって・・・ん?あぁ、ナイフか?大丈夫殺しゃしねぇよ」
笑顔の素敵なお兄さん。
キラッキラと輝いて見えるほどの整った笑顔、そんじょそこらのアイドルよりもよっぽどかっこいい。
あぁ、もう、これに騙されたんだ!美形なんて嫌いだ!
死んだ魚の目をしたお兄さんより笑顔の素敵なお兄さんの方が恐ろしいことを学びました。
「ナ、ナイフも恐いんですけど、その・・・手を離してくださいませんか?」
――・・・それはほんの数分前、
『すみませーん。一番近い駅ってどこです、か?』
死んだ魚の目をしたお兄さんの言ったとおり大きな通りには出られたけど、最寄駅の場所は未だに分からない私は、またそこらへんのお兄さんに声をかけました。
・・・だってそこにその人以外誰もいないし、かっこよかったし、いい人かなぁって。
そのお兄さんの横向きはかっこいいけどちょっと行き過ぎた感じのお洒落なお兄さんかなぁって感じだったんだけれど。
あらあらびっくり、こちらを向けば。
見えなかった顔半分には大きな刺青、耳にはピアスに携帯ストラップみたいのしてる、結構ヤバめのお兄さんでした。
ちょっと行き過ぎたどころの話じゃない、ぶっ飛んでますね、わかります。
『!!』
『んぁ?』
『すすすすみませんでした!!なんでもないです!』
『ん?なんだよ?逃げんなよ。・・・ん?お嬢さん可愛い顔してんじゃん』
『へ!?ちょ、離してください!!なんですか!!』
『え?いや、可愛いから拉致しようかどうしようかなーっと。かははっ』
『いやいやいや!!』
・・・そんなこんなでと今の状況に至るわけなのです。
私、苦労してる、意味のわからない苦労してる・・・!
「うぅ・・・こんなことになったのも、あの死んだ魚の目のお兄さんせいだ・・・」
「・・・ん?死んだ魚の目?・・・うわ、それ欠陥製品のことか?
「けっかんせいひん?」
きょとん、と驚きの表情を浮かべた刺青のお兄さんはすぐにニヤリと口角を上げた。
人を小馬鹿にするような、相手の恥ずかしい噂を耳にしたときのような意地悪な笑み。
「かはは、傑作だな」
独特な笑い声をあげて今度は綺麗に破顔した。
ナイフはしまってくれたもののいつの間にかしっかり私の腰を抱いている刺青のお兄さん。
もう言葉も出ないというか、どうしたらいいのかわからないのだけど、今の気持ちは一言で表せる。
こわい。
「刺青のお兄さん・・・死んだ魚の目のお兄さん知ってるんですか・・・?」
「刺青のお兄さん、か。・・・かははっ。 零崎人識。お嬢さんは?」
「・・・です。」
「ちゃんね。おぅけぃ。 死んだ魚の目のやつとは・・・知り合いっつぅか、なんつぅか・・・」
そこでまた人識さんは乾いた笑い声をあげました。
「んー。とにかく、今はもう遅いし、いーたんとこ行くか」
「え!何処にいくんですか!?ちょ、駅に・・・ひぎゃ!!」
抱かれていた腰をグイッと引き寄せられ、抵抗するまもなくそのまま抱え上げられた。
そして、なんという速さで走り出すの!!しかも、え、来た道を戻ることになるなんて・・・!!
え、ちょ、この年で迷子に抱っこ!?
「ひ、いやぁあ!!は、離してくださいよぉぉ!!わた私・・・おも、重いですからっ」
「かははっ!人識君をなめてもらっちゃあ困るよ、ちゃん」
「い、いえ、なめてなんかいませんから!・・・ぜんぜっ・・っ!・・・舌噛んだ・・・ぅう」
「かははっ!可愛い子ゲッチュー!」
人識君・・あれ?こんなの人識君じゃない?!
・・大好きですよ人識君。
でも、でもねぇ?(何
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