そう言って貴方は綺麗に笑うのでしょう
「ラビ、ラビってば!」
「ん!?・・・な、何さ??」
物思いに耽っていた様子のラビに、は少し膨れた。
せっかく一緒に過ごせる時間だってのに・・・ラビは最近いっつもこれ。
「・・・ラビの馬鹿」
私がふんとラビに背を向ければ、
「ご、ごめん・・・ちょっと考え事してて・・・」
ラビは慌てながら私を後ろから抱きしめた。
ご機嫌をとろうったって、今日は許してやらない。
ちゃんと問い質してやるんだから。
「・・・。最近、ラビ・・いっつもそうだよね」
「・・・え?」
明らかに動揺してるラビの声。
私を抱きしめる腕も、ピクリと反応していた。
「何・・・考えてるの?」
そっとラビから身体を離し、ラビに振り返る。
視線は真っ直ぐにラビの瞳と合わせた。
だけど、ラビはパッと視線を逸らしてしまう。
・・・・何なのよ。
「いや・・何でもない、さ・・」
そんな苦笑い作って、何でもないわけないじゃん。
いつもは食い下がる私だけど、今日は・・・なぜだか、無理だった。
ラビの考えてることが分からない。
・・・それがとても不安で、不安で。
「・・・何でもないわけ・・ないじゃないっ」
「・・・!」
何時の間にか、溢れ出していた涙。
私はそれをグシッと手の甲で乱暴に拭った。
泣きたくなんてないっ・・・涙を使うのなんて卑怯だもん。
「ラビ・・最近、何考えてるのかわかんないっ・・・いつも上の空で」
「・・」
「私のことなんて・・忘れちゃってるみたいで・・・」
「・・・、何言ってるさ・・?」
そっと優しく私の肩にラビが手をのせた。
私はそれを荒々しく振り払う。
「・・っラビの馬鹿!!馬鹿馬鹿!!ごまかさないで!!」
驚いたような、困ったようなラビの表情が痛いほど胸を締め付ける。
困らせたくなんて・・・ないのに。
「嫌い、嫌い・・ラビなんて・・・嫌いに・・なりたいよ・・・」
「待っ・・」
私は何かを言いかけるラビに歩み寄り、少し背伸びをして・・・キスをした。
最後のキスになるだろうと、思った。
「ラビは・・・誰のこと考えてるの・・?」
一瞬ラビは目を見開いた後、表情を険しくする。
「俺は、・・・俺はのことしか考えてないさ!!」
次の瞬間には強く抱きすくめられていて、
・・・一瞬息が止まった。
「最近、考え事が多かったことは謝る。でも・・・でも。
・・・・俺はのことしか考えてない」
考え事が多かったのは、本当のこと。
に寂しい思いさせたのも・・・本当のこと。
でも、俺は、と離れない方法を考えてたんだよ。
ブックマンとして生きる俺は、エクソシストであるお前をどうやって助ければいい・・・?
中立にいなければなんて・・・出来るわけがないのに。
と離れられるわけがないのに。
「ごめんな、・・・・寂しい思い、させたよな」
俺の腕の中で、は首を横に振った後・・・・今度は縦に小さく振った。
「・・・どっちさ」
フッと吹き出す俺を、見上げるは泣いていた。
でもそれを隠したいのか俺の服で顔をぐりぐりと拭く。
そんな姿さえ愛しくて仕方がない。
「・・・俺はとずっと一緒にいたいんさ。ずっとずっと・・永遠に」
は黙って聞いていた。
「でも。それには俺の立場はどうにも・・・危ういんさ。
にも今は・・話せないこと。でも、でも・・・いつかきっと全部話す。もう絶対にを泣かせない」
俺の腰に回っていたの腕が強くなった。
俺もを強く抱きしめた。
「・・・なぁ・・・。こっち向いて」
「・・・・・・何?」
と少し身体を離し、今度は俺から真っ直ぐに視線を合わす。
もう、何も隠したくない。
を・・・不安にさせたくない。
とずっと一緒にいたい。
の涙に濡れた瞳が俺を映した。
「・・・こんな俺でも、ずっと傍にいてくれますか・・・・?」
――空は見たこともないような青い空で、
少しだけ風が強かった。
の綺麗な髪が流れるように風になびいて、
優しい香りがした。
こんなに美しくも愛しい光景を、俺は一生忘れられないだろうと思った。
「もちろんだよ・・・!」
そう言っては綺麗に笑ったんだ。
・・・ねぇラビ、私は知ってるよ。
この後ラビも私に抱きついて『大好きさ!』
―“そう言って貴方は綺麗に笑うのでしょう”?
素敵なD.G企画様に参加させていただいたものです!
楽しませていただきましたv
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