「もしもし・・・ディーノ?」
『!どうした?元気にやってるか?』
「うん。元気だよ!」
『・・・・・・。はぁ・・・・ったく、そんな空元気じゃ俺は騙せないぜ?何年一緒にいると思ってんだよ』
「!・・・・ほ、本当に元気だよ!あのね、皆すっごく面白いし、楽しいし!・・・・・・ただ、あのね。ディーノに・・・聞きたいことがあって・・・」
『ん?聞きたいこと?』
「うん」
私はそこで一度、ディーノには聞こえない程度に息を吐いた。
そして思い出す。
昨日の、六道骸の、あの言葉。
共鳴するように頭のどこかで弾けた正体不明のシャボン玉。
疼く右眼と、抱きしめられた時の安心感。
『・・・・・?』
「・・・っ。あ、あのさ・・ディーノ・・・・・私っ、私はずっと・・・ディーノと一緒に、・・・いたんだよね?」
『・・・!』
「ずっと前から・・・私はディーノの傍で、生きてきたんだよね・・・?」
『?・・・当たり前だろ?何があった?どうしたってんだ?なぁ、ちゃんと説明しろよ・・・!!』
「・・・な、なんでもないよ!ただちょっと・・・その、気になって」
「・・・なぁ、」
「・・・ごめん、変だね・・!私何言ってるんだろ!もう学校行かなきゃ!またねディーノ、大好き!」
『なっ!!ちょ、待てっ――』
パチンッと弾くように携帯を閉じてから、ふぅと溜め息をついた。
そして背後の壁に寄り掛かり、ズルズルと重力に負けたように座り込む。
「・・・・・・本当の過去、か。・・・あははっ、何それ・・・意味わかんないよ」
――高所恐怖症は未だ治っていないんですね
――むしろ酷くなっていますか
「・・・・・・」
――知っていますよ、あなたのことなら
――否、過去のあなたなら
「・・・っ」
実際、私は小さい時の記憶はあまりない。
思い出せる最初の記憶は、・・・そう夕焼けをバックにした、ディーノの必死な表情。
本当の・・・過去・・・。
「・・・はぁ」
・・・本当、意味、わかんないよ・・・こんな自分・・・。
―ガチャッ・・・バタン
そして、もう一度、君と!P8
「ねぇ、沢田綱吉」
「え?・・・ひぃぃっ!?ヒ、ヒバリさん!?」
突然声を掛けられ跳び上がったツナを、雲雀はさほど気にした様子もなく、腕を組んだまま平然と続けた。
二人の周りの生徒はあからさまに二人を避けるように廊下を足早に歩いて行く。
まぁ、並盛の雲雀恭弥様がご登場ならばそれは仕方がない現象である。
「君、と同じクラスだよね?」
「え、ちゃん?・・・あ、はい、そうですけど・・・」
「今日、は来てるかい?」
「いや、今日はまだ見てない・・、です・・・」
「・・・そう」
雲雀は一瞬不機嫌そうに眉をひそめたが、くるりと踵を返して廊下を歩き出した。
道を開いて颯爽と去って行くその黒い学ラン姿を、ツナはポカンと見つめていた。
雲雀さんがちゃんに何の用だろう・・・。
頭に浮かんだ疑問はひっかかりはしたものの口には出さず、無理矢理飲み込んだ。
「・・・・あ、山本、獄寺君おは」
―ダンッ!!!
「――んだと!?じゃあ何か?テメェはが俺達を騙してるっていうのか!?」
「獄寺落ち着けって!俺が言いたいのはそうじゃな・・・・・・!、ツナ!」
「! じゅ、十代目・・・!!」
険しい表情で緊迫した様子の二人に、ツナは目を丸くして軽く後退していた。
あまりの驚きにひぃっと言う声さえ出なかったようだ。
獄寺は山本の衿につかみ掛かっていた手を緩め、バツが悪そうに視線を落とした。
「ど、どうしたの・・・?二人とも」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
黙り込んでしまった二人と居心地の悪い空気に、ツナはごくりと息を呑んでから、再度口を開いた。
言い争いの原因は既に耳に入っていたのだから。
「ちゃんの・・・こと、だよね」
「・・・・・・あぁ・・・」
「・・・っ、十代目、は俺達を騙してなんかいないっすよね!?」
「えぇ!?ちょ、何それ・・騙す・・!?」
「だから獄寺違うんだって!俺は、が骸たちと何か関係があるんじゃないかって、言ってるだけで・・・」
「だからは骸たちの仲間だって言いてぇんだろ!?」
「仲間とまでは言ってねぇって」
「同じことだ!!」
声を荒げた獄寺に、山本は苦笑をしながら否定をする。
その表情もだいぶ余裕がないように見えた。
「ちょ、ちょっと待って二人とも!話が全然読めないよ!」
「・・・・・・」
「・・・はぁ。そうだよな。あのな俺達が朝から話してたことなんだけどな・・・――」
「骸たちが絡んだときのちゃんの行動がなんだかおかしい。・・・昨日も骸がいただろうことも隠していた」
要訳したツナの言葉に山本は頷き、獄寺は苦い表情をした。
「だから、ちゃんは黒曜のやつらと何か関わりがあるんじゃないか・・・。
仲間とまではいかなくてもなにか関係を持っていて、俺たちにそれを隠している。つまり・・・知られたくない、こと・・・」
ツナは真剣な表情のまま、考え込んだ。
ひっかかる、だけど、だけど彼女は言っていたんだ・・・。
「ちゃんはボンゴレファミリーの幹部・・・」
「!! そ・・・そうなんすよ!!さっすが十代目!!俺もそれを考えていて」
「なら骸たちと関係があったとしてもそれは、敵対・・・とまでいかなくても友好的なものでは・・・」
―プルルルルッ
「「!」」
「・・すみませ、俺っす」
ツナの言葉を遮るように鳴り響いた携帯の着信音に、獄寺は慌ててズボンのポケットから携帯を取り出した。
すぐさま電源を切ろうと伸ばした指は、ディスプレイに表示された見知らぬ番号に思わず止まった。
「・・・・・・」
妙な胸騒ぎに、ゆっくりと通話ボタンを押す。
「・・・誰だ」
『よかった!!繋がったか』
「!? なっ、おま」
驚きに声を荒げる獄寺にツナと山本の視線は集中した。
『急に連絡して悪ぃ!でも急用なんだ』
「ちょっと待て!!何でお前が俺の番号知って・・・!!」
『あははっ、そこはまぁ色々コネでな!・・・それより獄寺、そこにツナと山本はいるか?』
一度携帯から顔を離し、跳ね馬です、とツナに伝える。
ツナは目を丸くしてからディーノさん!?と驚きの声を上げた。
『・・・いるみたいだな。それから・・・はいるか?』
「!?・・なんでのこと、」
『それは後だ。そこにはいるのか?』
真剣に鋭くなったその声に、獄寺は一瞬息を呑んだ。
「まだ今日は来てねぇ。いつもならもう来てるはずなんだけど・・・」
『チッ・・・まじかよ』
明らかに落胆と焦燥を感じさせるその声に、獄寺は言いようのない不安に駆られた。
の身に何かがあって、ディーノは何かを知っている。
『・・・今朝、から電話があった。その時ちょっと気になることを言っててな、・・・それから連絡がつかなくなったんだ』
「連絡が・・つかない!?」
『あぁ』
獄寺の声にツナと山本は視線を合わせ、話のだいたいの内容に検討をつかせているようで、表情を険しくした。
連絡がつかない・・・。
まだ学校に姿を現さない。
昨日の様子もおかしかったし、逃げるように帰っていたことも気になる。
ひっかかる全ての大元は・・・
「それって・・・それって六道骸と何か関係があったり・・・するか」
『六道骸・・・、!!確かそいつはエストラーネオファミリーの生き残り!?』
「あ、あぁ」
『まずい・・・!! おい、頼むを捜してくれ!!そして絶対に六道たちには引き合わせないでほしい』
「は!?ま、待て捜すことはわかった。だけど骸はに何が関係あるんだ!?」
『・・・・・・後、ってわけにはいかなそうだな・・・。これは極秘事項だ、誰にも口外はしないでくれ。
・・・・は、』
「黒曜・・・ヘルシーセンター・・・?」
ここが骸の言っていた“黒曜センター”なのだろうか・・・。
外観からして寂れたそこは、足を踏み込むのに十分躊躇わせるものがあった。
それよりまずはこの門を乗り越えなくていけない。
「久々に本業発揮ってところかな」
本業。・・・忘れてはいけない。
私はボンゴレファミリーの一幹部、マフィアだ。
「ふふん・・!そう、私はボンゴレファミリーの一員なのだー!」
タタタッと助走をつけてから、ひらりと門の上に飛び乗る。
バランスよく門の上に着地をしてから、衰えていない自分の体力に少しだけ感心した。
「うんうん。まだいけるね私」
「パンツ見えすぎだびょん」
「!?」
「迎えに来てやったぜ」
門の内側には黒曜第一中の制服に身を包んだ金髪の少年がいた。
前髪をピンでとめて、鼻の上には真横に大きな傷跡が目立っている。
彼は・・・この前の四人の中にいた一人だ。
額に片手を当てて、眩しそうに目を細めながら私を見上げている。
それより・・・!
「な・・・何見上げてんの!!」
「んぁ?ピンクかー、ちょっと子供っぽいんじゃねぇの?」
「う、うるさい!!!・・・っぅわ!?」
「げっ!?」
興奮してバランスを崩し、結構な高さのある門から私は真っ逆さま、地面と激突。
・・・・というわけにはならず。
「お、お前どんくさすぎだびょん!!」
「ご、ごめんなさい・・・」
金髪の少年に抱きとめられた。
呆れた顔の少年は、はぁぁっと大きく溜息をついたかと思うとぎゅうっとそのまま強く私を抱きしめた。
「え!?ちょ、・・・え!?」
「・・・・・・おかえり」
「・・・・・え、」
「おかえり、・・・」
―パンッ
「・・・け、・・・ん・・」
あぁ、また、弾けた。
この少年の名前を知るはずはないのに。
その言葉はとてもとても自然に、私の口から紡がれて零れ落ちた。
抱きしめてくれるその腕があたたかくて優しくて、とても嬉しかった。
もう、わからない。
私は何を隠し持っているのだろう。
これは誰の記憶なのだろう。
これは誰の感情なのだろう。
これは私なのだろうか。
・・・そうだ。
私はそれを、確かめに来たんじゃないか。
「犬、連れて行って。・・・六道骸の元に」
さようなら。
さようなら。
何も知らなかった幸せな私。
でも、でもね。
知ることが怖いの。
知らないことも怖いの。
どちらも、大切な何かを
失ってしまいそうだから。
さよならと、こんにちはと、それから・・・。
前回の連載書いてから4ヶ月経ってるっておいぃぃ!!
自分でびっくりだよまじすんません。
皆、ちゃんが大切で必死なんです。
そんなことが少しでも伝わればいいな。
2007.11.25
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