ねぇ、ソラ、リク・・・。



今は少しだけ休ませてね。



ここにいれば、一人じゃないんだ。


ここにいれば、いつか二人に会える気がするんだ。


ここにいれば、・・・淋しく、なくなりそうなんだ。






不安を、


戸惑いを、


過去を、


未来を、




今は考えなくてすむような・・・そんな気が、するんだ。












嘘、


ごめんなさい。





















今は考えたく・・・・・・ないんだ。

















お願い。


今はまだ・・・待っててね。
























06 − の瞳に、揺らぐ


























機関メンバーが思い思いにに声をかける。

最初は緊張した面持ちだったも少しずつ表情が緩やかになっていった。



「ホント可愛いーね、ちゃんって!今日俺の部屋で一緒に寝ようよー!」


「えぇ!?」


「では私の部屋で薔薇の風呂に入るのはどうだ?白い肌には赤い薔薇の花弁がよく映える」


「薔薇のお風呂・・・」


「デミックス、マールーシャ・・・お前達は変態か?新人をたぶらかすんじゃない」



明らかに口説いている一部に、ヴィクセンの呆れた声が響いた。










そんな中、の目に映ったのは自分と同じ年くらいの男の子の姿。

の周りを囲む数名とは別に、遠巻きにその様子を眺めている面々の中の・・・栗毛の少年。







「・・・・・ッ・・・!!」




カチンッと視線が交わった瞬間。

突然、胸が、締め付けられる衝動。





目を見開いたはロクサスから視線を逸らせず、瞬きすらもできなかった。



「・・・?」



ロクサスもそんなから目を逸らしはしなかった。

きょとんと目を丸くして、動きを止めている。




晴れ渡る空のような

蒼い瞳。




思い出すのは・・・





「・・・・・・ソ・・・っ」



無意識に紡いだ名前をハッと飲み込めば、突然、ブワッと涙が溢れそうになり勢いよくロクサスから目を逸らした。




違う・・・全然別人・・・。

そう、わかっているのに・・・、どうしてかその思いを拭い切れない。

半端に高鳴った胸が落ち着いてくれない。




「・・・・・・。・・・俺の名前はロクサス。・・・だよね?」



が目を逸らしている間に、ロクサスはの目の前まで歩みを進めていて。

ゆっくりとに手を伸ばしてから、



「よろしく、な」



と優しく微笑った。



「・・・!」



泣いちゃ、ダメ。

泣いちゃ・・・!






「・・・・よろしく、・・・ロ・・ロクサス」




向けられた笑顔に重なった、懐かしいあの笑顔が、


切なくて、愛しくて、苦しくて。



手を、


握り返せなかった。





「・・・・・・」




「・・・。今日はもう部屋に、行くか・・・?」


「っ・・・、・・・・・うん」



そっと肩に手を置かれ、は小さく頷いた。

妙な空気に包まれた室内を掻き消すように足音を立て、アクセルはを連れて個人の部屋がある廊下へと歩き出した。





「・・・あ、ちゃん、また明日ー」


ゆっくり休むんだぞ」


「おやすみなさい」




「あ、・・・おっ、おやすみなさい」



とロクサス妙なやり取りに呆気にとられていた面々は、ハッとしてに声をかけた。

は振り返ってから照れたように小さく会釈をし、また歩き出した。

そんなを心配そうに見つめるメンバー。



アクセルはロクサスに気にすんな、と声をかけると、と廊下の角を曲がって行った。





































「・・・どうしちゃったのかな…ちゃん」



デミックスがぽつりと呟き、他の者も首を傾げた。












「・・・・・・」




・・・何なんだ?

俺がに何かしたのか・・・?

あんな、泣きそうな顔・・・・・・。





『・・・・・・ソ・・・っ』



・・・ソ・・・・・・?





胸が締め付けられるような痛みに顔を歪め、と触れることのなかった右手をぎゅっと握りしめた。



身体が痛い訳じゃない。

胸の奥底・・・はっきりとわからない場所に、はっきりと感じられるこれは・・・痛み。



これは・・・何?





『・・・・よろしく、・・・ロ・・ロクサス』





痛い。

痛い。

苦しい。


俺を見て泣きそうだった・・・


いや、俺なんか見ていなかった・・・・・・誰か違う、俺じゃない誰かを思っていたの瞳・・・。





初めて会った


初めての感覚が渦巻く。









「・・・くそ・・・っ、・・・何なんだ」




ロクサスは呻くように言葉を吐き捨て、眉間に皺を寄せた。