二つの影の一つは、ゼムナス。
もう一つは・・・・・、
04 − Unrest & ...
ゼムナスの隣には、機関のコートを身に纏った小柄な“新入り”らしき姿。
フードを目深に被っているため顔も見えなければ、表情すら読めない。
機関メンバー・・・少し焦れったいのが本音。
「―・・・ということだ。引き続き与えられた任務を遂行し、暇がある者はコイツ・・・の面倒をみるよう」
ゼムナスから伝えられたのは、新入りの名前が“”だということ。
機関についてはおおまかな説明しかしていない故、各個で何かと教えてやれとのこと。
「「「・・・・・・」」」
全員はっきり言って、開いた口が塞がらない・・・と言った顔。
それは今までゼムナスがこんなにも新入りに丁寧な対応をしたことなどないからだった。
新入りが来たとしてもただ一言『新入りだ』と言い残して・・・去っていく、そんなことは当たり前だった。
それなのに今回は、
・・・・・何かある。
誰もがそう思ったに違いなかった。
「・・・私は任務に戻る」
一度を見つめてから、ゼムナスはゆっくりと闇の回廊を開く・・・と、
「・・・行っちゃう、の?」
今まで一言も喋らなかったが、ゼムナスのコートをヒシッと掴んでいた。
その声は少し震えていて、
明らかに・・・
「・・・・・女みてぇな声・・」
全員の声を代弁するようにアクセルはぼそりと呟いた。
「あぁ。私にはやるべきことがあるのだ。また後で・・・な、」
ゼムナスは振り返りそっとの頭を撫でた。
「・・・・!?」
「・・・・ぇ!?」
いつものゼムナスからは考えられない行動にあっけにとられるメンバー。
「・・・・・・」
じっとゼムナスを見上げ、は何も言わずそっとコートから手を離した。
「いい子だ」
そう言い残し、ゼムナスの姿はゆっくりと闇に溶け込むように消えていった。
――また、残されてしまった。
小さくなっていく入口を見つめる。
意味の分からない不安が・・・押し寄せる。
「・・ぃ、・・おい・・・?」
知らない声に呼ばれ、ビクッと肩を揺らして振り返る。
そこには知らない人達がいて、知らない風景が広がっていた。
あぁ、ここは私の知らない世界なんだ・・・と、頭の片隅で実感した。
自然と、身体が強張った。
「あ・・・あの・・」
「・・・でいんだよな?」
赤毛のその人は、背も高くいかにも恐そうな人で。
「・・・はい」
「そっか。俺はアクセルだ。よろしくな」
でも、・・優しそうに笑ってくれて。
「可愛らしい新入りだな」
「ほんと、ほんと!男だなんて信じらんない」
「それにしても・・・さっきのゼムナス・・・いや、やめよう」
「そうそう、見なかったことにすればいいのよ。見なかったことにすれば」
一人ぼっちで残されてしまった世界に
久しぶりの賑わい。
久しぶりの笑顔。
久しぶりの・・・
心が・・・揺れた。