「ちょ、ちょっとそんなに砂糖入れたら・・・」


「は?」




ズザー




「あぁぁああ!!」


「・・・あれま」















生クリームデコレーション



















「だから加減してって言ったのに!」


「かははっ、まぁまぁ気にすんなって」



砂糖が(人識の手によって)大量に入れられたまだ液体状の生クリームをカシャカシャとかき混ぜる。

とろとろとしているのに、どこかざらついた感じがるのは・・・はぁ、砂糖のせいか・・・。



「甘い方が美味しいだろ?」


「・・・限度ってものがあるでしょうが。・・・はい」


生クリームの入ったボールと泡立て器をズイッと差し出す。

電動でない泡立て器でクリームを泡立てるのは少々疲れる。

・・・こんな時こそ人識だ。


「うぉ」


「頑張って、生クリームの出来は人識の手にかかったから」


笑顔で親指をグッと立てる。


「ん? りょーかい」


よっしと意気込む声の後、ガシャガシャと勢いよく金属のぶつかる音が聞こえ出す。



「・・・ごーかい・・・」



まぁ、あれならクリームもすぐに出来るだろう。



そんな人識と生クリームを残し、スポンジケーキ焼け具合を見にオーブンを覗き込む。

暖色の光の中、ふわっと膨らんだ生地。



「・・・よし。いい出来」



思わずニマッと笑ってしまった。



ケーキを手作りするのなんてすごく久しぶり。


それもこれも人識がいきなり『の手作りのケーキが食べたいなー』なんて甘えながら言ってきたのが始まり。



!傑作なできだと思わねぇ?」



後ろから聞こえた嬉しそうな人識の声に振り返れば、ズイッと突き出されたボールの中にふわふわの生クリーム。



「うん!傑作だよ!」


「だろ?」




私の言葉に嬉しそうにかははっと笑う人識。

そして




「・・・んぅ!?」



指で生クリームを掬い、私の口に押し込んだ。

口いっぱいに広がる甘すぎる味と、人識の悪戯な笑み。




「味も、傑作だろ?」



「・・・っ・・・甘、すぎ・・」



チュッと音を立てて私の口から指を抜きとる。

いやに恥ずかしい。




「ふーん・・・じゃあ俺もいただこうかな」




ニヤリと笑んだ人識。

あぁ・・・何か企んでる。




一歩身を引いた私にグッと近づき、また指でたっぷりと掬った生クリームを差し向ける。




「あーん・・・?」




口を開けるよう促す人識。


なんとも楽しそうな表情。









「・・・・変態」




「かははっ」




仕方なしにゆっくりと口を開けば、案の定口内に侵入する人識の指。

わざとらしく口内から唇にかけてなぞる様に生クリームをつけた。





「・・・・美味そ」


「・・・・・・っ」







うっとりとしたような眼で私の口元を見つめる人識が妖艶で、恥ずかしくて、


・・・思わず両目を閉じた。









刹那、触れる柔らかいそれ。





「・・・ふ・・っ」





生クリームを舌で舐め取られるのがわかって、

次第に侵入する人識の舌があたたかくて、

















食べられてしまうかと、錯覚した。



















「・・・・甘・・・」



「・・っは・・」



唇を離し、自分の唇の端を舐め上げながら、人識は少し眉を寄せた。






「人識が悪いんでしょう・・・。砂糖入れすぎるから」




「ん。それは違うな・・・、」










オーブンがピピピッと鳴いてる。



スポンジケーキが焼きあがったらしい。











早く、出さなきゃ。


早く、飾らなきゃ。


早く・・・
















人識は親指についていた生クリームを舐め、射るような上目遣いで、










が、甘すぎるんだよ」













そんな歯が浮くような甘い台詞を吐いたんです。

































早く・・・





早く、食べなきゃ





甘い甘い 生クリームデコレーションケーキを。
















































『でなくちゃ、私が食べられちゃう』