傷つけてしまうのは、こんなにも簡単なのに


どうして


傷つけないことはこんなにも難しいのだろう


・・・願ってもいないのに















第九夜
  苦しみは、もう二度と


















ふふッ・・ふふふッ!! さぁ四人がかりなんだから、容易いでしょう?」


”いや、AKUMAは狂喜にも似た微笑を浮かべ、イノセンスを操っている。


本当だ。

四人がかりなのに、こんなにも苦労するのはこのAKUMAの特殊能力のせいだろう。



「埒が明かないさッ・・! 攻撃しようにも・・くそッ・・アレンなんかわかったかよ?」


ヒュンッ と振り下ろされるリボン(イノセンス)を交わしながら、ラビは苛立たしげにアレンに問いかけた。

AKUMAを観察しながら攻撃を避けているアレンは小さく首を振った。


―わからない








どうしたらいい?

私のせいで皆にあんなにも苦労させているんだ。

は唇をギュッと噛んだ。

・・・どうすれば・・・。

・・・ん・・・?


「・・・?・・・! ・・・発見」


発見、発覚。

私のイノセンス桜蓮はあんなにか弱くない。

けっ。どこぞの小娘よ。

私の桜蓮ちゃんと一緒にしないでほしいな!!!



はニヤッっと小さく笑った。



「・・・反撃開始♪」



生憎、可憐な守られヒロインは時代遅れだと思ってますので。














「ぎぃいやぁあぁあああぁあぁあ!!!」



「「!?」」


断末魔といえるその悲鳴を聞いたエクソシスト+AKUMA+ノアは一瞬固まった。



「・・・・何・・・・?」


リナリーは小さく呟いてダークブーツの発動を止めた。


神田は六幻を下ろし、ラビは槌を元のサイズに戻していた。


叫び声の聞こえた方を思わず凝視。・・は?という不安だけが募る。




「ん?・・・チャンス・・?」


逸早く視線を戻したAKUMA“”は、ペロリと舌を除かせた。

瞬間イノセンスを振り上げ襲い掛かるは、一番手近にいた・・リナリー。



「ふふッ!! ひゃはッ・・死んじゃえぇえ!!」





ザシュッ!!







鈍い音が響く。


肉が切れる、生々しく痛々しい音。







「・・・ッあ?!」








同じ二人が







「・・・ッ・・・痛いねー」









同じ傷を作り、対峙していた。










「・・!?」


の後ろに匿われたリナリーは驚きに目を見開きながら叫んだ。


アレン、ラビ、神田も絶句してその場を見つめている。




「・・痛いなぁ・・。だからあなたも痛いでしょ・・?」


右腕に絡みついた凶器なるリボンを、ぐっと掴みながらはゆっくりと言った。

AKUMAも同じ右腕から鮮血を溢れさせている。


「な、貴様・・」


ぎりっとを睨みつけながら自分のイノセンスを強く握る。


「でもね・・桜蓮の威力はこんなに可愛らしいものじゃないんだよ。それに・・・」


ふわりと、は意味ありげに微笑った。

と同時に右腕に絡みついたAKUMAのイノセンスをぐっと力強く引く。


「ぐッ!?」


自然、AKUMAはに引き付けられ、と“”の距離およそ5cm。

はAKUMAの耳元で囁くように






「聖職者は傷つけないようにちゃんと躾けてるから」








と優しく言った。


瞬間、

AKUMAの背から覗くのはのイノセンス。

可愛げのない威力のイノセンス桜蓮。








「ッ・・ぐあッァアァアア?!」










の姿から元の兵器の姿に戻り、そして還るべき世界へ消えていく。

ただ、ただ、利用されただけの哀れな魂。


二度も苦しい思いをさせてごめんね。

もう休んでいいんだよ。











「・・・な〜んだ。今回はここでお仕舞いかぁ。じゃ、またね♪」


すっと闇に溶けるようにロードは消えていった。

まるで遊びを楽しんでいた、ただの子供のように。
















「・・・どうか、安らかに。 どうか、二度と苦しむことのないように」


は自分の血か、はたまた“”だったものの血に汚れた手を合わせ、日本らしい祈りのポーズをした。




終わったんだ。


誰もが心の中で呟いた。


静かな静かな森の静寂の中で。


























すっと力尽きるように崩れ落ちていくをリナリーが後ろから支えた。


!」


そこに集まる三人も心配そうにを見つめた。


・・? 大丈夫ですか?」

!しっかりするさ!」

「おい、


はハァと安堵の溜息をつき皆を見回した。


「・・・お疲れ様!」


そしてニコッと疲れは見えるものの明るい笑顔をみせた。

自然、緩む全員の頬。




















光が、もどった





































「結局、イノセンスはいとも簡単に見つかっちゃいましたね」


「そうね。でも、ま、よかったじゃない」


ガタンゴトン、と揺れる帰路の列車。

なんだかとても久しぶりに乗ったような気さえした。



の怪我も結構酷いしなー」


ラビはの隣の席を独占しながら、の寝顔を見つめた。

・・・ジャンケンで勝ったのだ。


「それに結局、もやしの言ってたことは何だったんだ?」

神田はいかにも役立たず、と言う目でアレンを見た。


「・・む。 僕の言っていたことは合っていたんですよ。のイノセンス“桜蓮”。

 あれはAKUMAが持っていたものと同じ形状をしていた。・・でもやっぱり形状だけなんですよ。

 威力もシンクロ率も性格も真似はできない。適合者が偽者なら、イノセンスだって所詮偽者にしかなれないってことなんでしょうね」


でも気づけなかったから意味無かったですね。とアレンは肩を竦めて続けた。



「・・・今回がんばったのってだけな気がするさ。なんか申し訳ないな」

うーん、と一同納得。


「次は僕が絶対守ってみせますよ」

と、アレン。

「ふ、アレン君じゃ無理よ。私がやるわ」

と、リナリー。

「俺がかっこよく守ってやんだから、邪魔すんじゃないさ」

と、ラビ。

「はッ! お前らみたいな弱小な奴じゃ無理だな」

と、神田。




バチバチ














そうして、今回の任務は幕を閉じていった。



































やっと、終わりました、第1任務!
長くて永くて、申し訳ありませんでした;
そして読み続けていてくれた方、休止を挟んでしまって申し訳ないです;;
これからも続きます!逆ハー生活!

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