ひとつの命が消えることなんて
とてつもなく簡単で
望んでもいないのに終わりは来る。
永遠なんて言葉
信じていたわけじゃないけど
君の前では
それさえもありえるような気がしていたんだ。
永遠なんて要らないよ。だから今だけは、
「・・・にゃはー・・ちゃんの膝は気持ちいいなー・・・!!」
「・・・変な奴」
私の膝の上に頭を乗せ、幸せそうな表情を浮かべる出夢。
切ってしまい短くなった黒髪をそっと撫でながら、私は出夢を見つめる。
「・・・ん?何かな? 僕の可愛い可愛いちゃん。・・ぎゃははッ」
眠たそうな瞳で私を見返す出夢はまるで猫のよう。
日向で丸くなって寝てるし、気まぐれだし・・・私には懐っこいし。
「ねぇ、出夢は・・・永遠って信じる?」
突然の質問に目を丸くした後、出夢はゴロッと私に背を向けた。
私は首をかしげる。
「・・・僕は、信じないね」
きっぱりと言い切る出夢。
なんだか・・・その答えをずっと前から用意していたようだった。
「どうして?」
「・・・・永遠ってさ、具体的にどこまでって区切りのない『何時までも』ってことじゃん?
“永遠に一緒”なんていうけどさ、そんなんどっちかが欠ければ果たせないもんだもん」
「・・・・・・」
「死ぬことが永遠の終わりなら、・・・その後はどうなるんだろうな?
永遠に終わりがないならさ、どこまでが永遠かなんて誰にもわかんないじゃん。
・・・僕達がどこからどこまで繋がっていて、続いているかなんて・・・わかんないしね」
ザァアッと清々しい音を響かせて、風が葉を揺らした。
二人の髪をなびかせ、出夢の言葉を遥か遠くまで運んでいくようだった。
出夢の表情は見えない。
今、何を見ているの?
今、何を考えているの?
今、誰を想っているの?
「出夢・・・?」
永遠なんて信じないといった貴方は、きっと
信じていなかった訳じゃないと思う。
信じられなくなったんだ。
永遠に一緒だと想っていた、兄妹の ――死。
私は膝の上の出夢を抱きしめた。
壊れ物を扱うように、優しく、優しく。
「ねぇ・・・出夢? じゃあさこうしよう」
「・・・・?」
「永遠なんて要らないから、今をずっと・・・一緒に過ごそう」
「・・・・ぎゃはははッ! もう僕、大好き!!」
「な、何 笑ってんのよ!」
肩を揺らして笑った出夢を、ペチッと叩いてから私は赤くなった顔を隠す。
そんなを見上げてから出夢はスッと起き上がった。
「ありがと・・・」
私を抱きしめながらそう囁いた出夢の声はやたら大人びていて、少し驚いた。
長い腕は私をしっかりと包んでくれた。
忘れないよ
出夢の言葉、出夢の声。
あの時の私は、出夢の言葉に納得したし共感した。
でも
心のどこか奥の方では
ありえもしない“永遠”を
貴方と過ごす“永遠”を信じていたんだ。
馬鹿だと笑ってくれても
子供だと呆れてくれてもいいよ。
もう一度貴方との今を過ごせるのなら。
永遠なんて要らないよ。
だから今だけは、
私を抱きしめていて