どんなに嫌がってももう、手放すつもりはないけれど
「離して・・・っ、離してって言ってるでしょ!!」
ジタバタと暴れるの腕を易々と片手で押さえつけ、もう片方の手で髪を掻き上げた。
どうして女という生き物はこんなにも柔なのか。
「はいはい。わかったから、暴れるなっつうの」
「わかってない・・・!」
「・・・はぁ」
未だ暴れ続けるを、くるりと自分に向かせ、視線を合わせた。
ちっさいに合わせてもちろん俺はかがまなくてはいけない。
ちなみに腕はしっかりと紐で固定済みだ。
「・・・・っ」
「おぅおぅ、威勢がいいね」
ジッと俺をにらめ付けるが何だか面白くなって、俺は吹き出した。
そんな俺が腹立たしいのかはいっそう眉間に皺を寄せる。
「・・・ふぅ。・・・何なのよノア、何が目的?」
逃げられないことを悟ったのか、少し大人しくなった。
そんなに俺はニコッと笑いかける。
・・・目的? そんなの決まってる。
「俺の女にならない?・・・ちゃん」
驚いたように見開く瞳、
そして一瞬で屈辱と怒りの色に変わった。
「ふざけないで!!私はエクソシストよ!?誰がノアの女になんて、・・・っ!?」
―ズズッ
の身体の中心を貫く、自分の腕。
の心臓に一番近い場所。
「俺、前から好きだったんだよなー、ちゃん」
―そう、戦場でを見つけたあの日から。
「・・・・っ、ぅ」
片目を瞑り、何ともいえない恐怖に怯えるの顔。
「なのにさ、なんでかな・・・。俺の恋した少女はエクソシストなんて・・・さ」
―敵同士にも程がある。
今この瞬間、一人のエクソシストを消滅させるのは容易いことだ。
そして排除すべきイノセンスを一つ消滅させられる。
「選べよ、」
クイっとの顔を上げさせてしっかりと視線を合わせた。
「俺の女になるか、今ここで・・・・・死ぬか」
絶望の色。
それはこの瞳の色を言うべきか。
「・・・・・・」
つぅっと流れた涙の意味。
それは、イノセンス一つが破壊されること、それがどれだけ教団にとってのダメージになるのかは知っているからだろう。
「・・・愛してるよ、」
抵抗のなくなったの唇に、そっと自分の唇を重ねた。
こんな形でしか、君を愛せない。
こんな形でしか、出会えない。
あぁ、どうしてこうも俺は運がない。
どんなに嫌がってももう、
手放すつもりはないけれど
本当にほしいものは、どうして手に入らない。