もう、嫌だよ・・・
絶対に離さないで・・・
もう、どこへも行かないで・・・・
潰れるくらい、抱きしめて、それから、キスをして
歩道橋の上、いったいどれくらいそうしていたんだろう。
真っ暗な空にはまばらな星が輝いていた。
「・・・・嫌いだよ。何も言わずに・・・・なんでいなくなっちゃったの」
萌太の体を抱きしめたまま、消えてしまうのを恐れるかのように服の裾をギュッと握り締めた。
実際、一度萌太は私の前から姿を消したのだから。
「・・・・・・」
ずっと、待っていた、耳元で聞こえる声。
もう忘れかけていた、このぬくもり。
「・・・ずっと待ってたんだよ、・・会いたかったんだよ・・・?」
「・・・僕もに会いたかった」
「だったらなんで・・!!」
萌太の体から身を離し、私は萌太に視線を合わせた。
とても悲しそうな瞳
悲しくて、寂しかったのは私の方なのに。
「・・だったら・・・なんで・・」
「巻き込みたく・・・なかったんです」
静かな空間に、響く綺麗な声。
懐かしくて愛しい・・声。
「を・・危険な目にあわせたくなかった」
知ってるよ。
萌太は『石凪』
萌太は『死神』
だから、京都に行ったことも。
「と離れなくちゃいけないと思ったんです。・・・でも」
スッと私の頬に萌太の手が触れる。
困ったような悲しそうな微笑を浮かべる萌太。
「でも・・・僕は、がいなくちゃ・・・駄目なんですね」
触れている手が震えている気がした。
「・・・・本当は、もう会わないつもりでした・・。でも・・でも・・・無理でした」
泣いているのかと思った。
「・・・嫌いだなんて・・言わないでください」
泣いているのは自分だった。
「・・ごめん・・ごめんね・・・嘘だよ、嫌いだなんて嘘・・・!」
頬に触れた萌太の手に自分の手を重ねた。
大きくて優しくて・・・とても落ち着く。
グッと逆の手で腰を引かれ、再度萌太の胸に収まる。
「大好き・・大好きだから、待ってたんだよ」
「・・・ッ・・」
萌太も泣いてるんだと思った。
嬉しかった。
もう、離したくなかった。
真っ暗な空
まばらな星が輝いて、二人を照らしていた
「もう・・離しませんから」
触れた唇は、優しい涙の味がした。
潰れるくらい、抱きしめて、
それから、キスをして
約束するよ、もう絶対に君を離さないから
―Happy End―