「ディーノ!今日は、ディーノが学校行ってたときの話が聞きたい!」
「ん?あぁ、よし!じゃあちゃんと横になって、眠くなったら寝るんだぞ?」
「うん!」
アイシテルって言ってみ?
― そして、もう一度、君と! 番外編 ―
「―んで、その時にアイツが・・・、」
片肘をつきの隣りに寝転がりながら、くだらない自分の昔話をする。
いつからかの寝る前のそんな習慣は、俺にとって、とても幸せな一時になっていた。
シングルにしては大分大きすぎるベッドで一人、眠りに着くことを、顔には出さずともは寂しがっていたから。
話すのを止め、次第にうとうとしだしたの髪を優しく撫でた。
それにはハッと気づいたように目を見開き、俺の服をギュッと握る。
「 ! ・・・どした、?寝ていいんだぞ?」
「・・・・・・」
「ほら、俺はどこにもいかねぇから。な?」
「・・・・・昨日、ね。怖い夢みたんだ」
目を伏せ、俺の服を握ったまま、は少しだけ恥ずかしそうに話し出した。
俺は小さくうん、と頷いての頭を優しく撫でる。
「知らない人が、・・たくさんいるの。でも、ディーノもロマーリオも・・知ってる人は誰もいなくて、」
「・・・うん」
夢を思い出すのと同時に恐怖も思い出してしまうのだろうは少しだけ震えていて、俺はの体を自分により近く引き寄せた。
「怖くて怖くて、独りぼっちだって泣き出したら、・・・目が覚めたの」
「・・・」
「・・・ディーノ、いなかった。ここにも、ディーノの部屋にも」
「・・・あぁ」
ふと今日の昼のことを思い出した。
早朝から、野暮用で仕事にでかけた俺が昼過ぎに屋敷に帰ってくると、玄関に入って早々が勢いよくしがみついてきて。
俺が何を聞いても何も言わず、少し経つと笑顔で『お帰り』と言ってから、何もなかったように戻っていった。
それから今まではいたっていつもどおり。
「それで、か」
「・・・ごめんなさい。ディーノは仕事があるのわかってる。だから気にしないで」
「俺のほうこそ、ごめんな?が怖い思いしてるのに傍にいてやれなかった」
「ディーノは悪くない!!」
首を横に振りながら必死に声を荒げたに、俺は真剣な目を向ける。
「俺が悪い。だから今夜は朝までここで寝るの傍を離れない、・・・駄目か?」
最後にニッと悪戯に笑ってやれば、は驚いたように目を丸くし、それから嬉しそうに笑った。
「駄目じゃない!」
「うしっ!決まりな!」
わしゃわしゃと勢いよくの頭を撫でれば、は抵抗しながら、笑った。
「ディーノ大好き!」
「俺も、が大好きだ」
の前髪を上げて、額にチュッとキスをおとす。
はくすぐったそうに、でも嬉しそうに、ふふと笑った。
「朝まで一緒で平気なの?明日、仕事は?」
「んー、夜から。だからゆっくりできるな」
「ホント!?じゃあ朝ごはんも一緒!」
「あぁ!」
は満足そうに体を揺らしながら、毛布に入りなおした。
俺も、横向きだった体勢をと肩を並べるように仰向けになり、何ともいえない安心感に息をついた。
月明かりが窓から差込み、部屋の中を薄く照らしていた。
「・・・今夜は、ディーノがいるから怖い夢みないね」
「そっか。んじゃ、夢の中でも一緒な」
「夢の中でも!?・・わぁ!うん、一緒ね!」
嬉しそうに笑っているの声を聞きながら、俺はゆっくりと瞳を閉じた。
と、すぐに『あ』というの小さな声と、同時にベッドが軽くぎしりと揺れた。
反射的に目を開ければ、上から俺を覗き込んでいるの顔がすぐ近くに、俺の目に映った。
「忘れてた」
そう言って、は俺に顔を近づけて、
唇にキスをした。
「!!」
寝る前のおやすみの挨拶。
それは俺からにする額へのキス。
そして、から俺にする頬へのキス。
でも今日は、
「っ!?」
「へへっ、おやすみ!ディーノ!」
「・・・・・っ、たく!・・・・おやすみ」
・・・唇になんて反則だっつの・・!
赤くなっているだろう頬は、暗い部屋では誰にも見られることはなく。
への確実に募る愛しさは、きっともう止めることはできないだろう。
しばらくして、静かに聞こえ出したの寝息。
俺はにゆっくりと向き、俺にキスをしたその唇に、
今度は俺から・・・そっとキスをした。
「・・・」
の『好き』も俺へのキスも、
それはきっと俺の『好き』と俺からのキスとでは意味が違う。
あぁ、俺はと出会ったあの時から、きっと欲しいんだ。
俺と同じ気持ちでのキスを。
俺と同じ意味での『好き』を。
いや、それ以上の・・・
アイシテルって言ってみ?
今は、また夢の中で会いましょう。
連載番外編その@!
ディーノとヒロインの過去編でした!
これから連載番外編増やしていこうと思うので、こちらもよろしくですv
連載では書ききれない部分を少しでも書いていけたらいいなぁ・・・。
2007,05,06