あたたかい雪
「ふへ〜・・・さむッ」
息を吐き出せば、一瞬でポワァッと白くなり消えていった。
ブルッと反射的に身震いをして、首をすくめる。
綺麗な・・・透明に澄んだ青空が、清々しく寒さを煽る。
「冬・・・だなぁ」
そうポツリと呟いて、もう一度白く息を吐いた。
「風邪、引きますよ」
「!」
ぱさっと肩にかけられたのは、少し大きな上着。
布地に隠された顔を揺らし、振り返る。
そんな気の利いたことするのは・・・
「・・アレン」
見上げたその顔は少しムスッとしていた。
でも私と目が合った瞬間、少し首をかしげて私を見つめ、フッと困ったような笑顔に変わる。
それはアレンの不思議な癖。
「は薄着過ぎます。もう冬なんですよ?」
「うん。・・ありがと」
アレンの笑顔につられて自分も笑顔になる。
今このときが私のいちばん優しい笑顔になれる瞬間だと、思った。
・・・見たことなんてないけれど。
「何、やってたんですか?」
私と肩を並べるように隣を歩き出しながら、アレンも先ほどの私のように少し首をすくめた。
「うーんとね・・・散歩・・かな?」
「寒いのに・・元気ですね」
「冬なんだもん。寒さを感じてあげなきゃ!」
私を見つめ、歩む足を止めたアレン。
私も自然とアレンの動きを倣う。
「そう、・・・ですね」
ふわっと笑い、アレンはらしいです、と続けた。
そう?と私も笑う。
一緒にいると、相手に似てくる、なんていうけれど。
私はアレンに似てきているのかな。
あんな風に優しく笑えているのかな。
・・・笑えていたら、いいな。
「はいつも正しいこと言うんですね」
前を向き、青く透明な空を見上げるアレン。
その顔はなんだか楽しそうで・・・嬉しそうな顔。
「・・・正しい、こと?」
「はい。正しくて、優しい・・こと」
私も空を見上げ、少し考えた。
・・・正しくて、優しいこと。
私はそんな大層なことは言えない。言えてない、と思う。
「ふふっ・・・いいんですよ!は悩まなくて」
ギュッとアレンが私の手を握る。
冷え切った私の指先と、少し冷たくなってきているアレンの指先が柔らかく絡まった。
そして、あたたかく、なる。
触れている手と、胸の奥。
「・・・・・・」
「・・見えたんです、窓からの姿が」
「私の?」
「はい。・・すぐに走って行きたくなりました。こんなに寒そうな空の下なのに、の周りは、すごく・・・暖かそうで」
「・・・それで、来てくれたんだ」
「はい、でも、外に出たらやっぱりすごく寒くて。・・・上着を取りに戻ったんですよ?はこんな薄着ですし」
「・・・だからアレン、ちょっと怒ってたのか」
ふふふっと笑った。
なんだかとてもあたたかい気持ちになってきて。
嬉かった。
「でも、やっぱり」
絡めた手と、逆の腕で、私を身体ごと引き寄せる。
全身が、アレンに触れる。
「の周りはあたたかい、です」
「・・・変な、アレン」
アレンの服をぎゅっと握り、心地よいあたたかさに息をつく。
変ですか?とアレンの声が聞こえた。
すぐ近くで。
「変だよ。・・私の周りはあたたかくなんてない。さっきだってすごく寒かったの」
でもね、と一息置いて。
綺麗な白色の髪を見上げた。
まるで雪のようだと、心のどこかで考えた。
「アレンが来てくれたら、すごく・・・すごくあたたかい」
「・・・変、ですね」
「変・・かな・・?」
身体を揺らして笑う。
自分の振動か、貴方の振動か。
もうすぐ雪が降りそうですね
うん、もっと寒くなるね
でも
二人なら、
きっとあたたかい。
8500Hit みさぎ瑚乃羽様に捧げます
『アレン・ほのぼの』
大変大変大変お待たせいたしました!!
もう土下座しまくって頭部はげさすしか償うことができそうにないです!!
サイト移転前から、ここに遊びに来てくださっていた瑚乃羽様大好きです。
今回のお話、短編ものの中ではいい感じに出来たと思っております。
(相も変わらず駄文には違いありませんが;)
こんなものでよければ、どうかもらってやってください!
伶
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BGM:小さな願い
ByHAPPYDAY