眠い
だるい
身体が、重い
そろそろ、時間、だ。
―第三夜―
「優姫、大丈夫だった?」
理事長のいる特別寮に戻りながら、は優姫の腕をとりあげた。
「え?何のこれしき!全然平気に決まってるよ!」
「優姫は特別頑丈にできてるんだな」
「うるさいよ零」
ぎゃーぎゃーと騒ぐ二人の一歩後ろをはゆっくりと歩く。
目は少しぼんやりとしていた。
「・・・?・・・!!」
「―・・え・・・?」
優姫の声に気づいた時には、既に零の胸の中にいた。
「大丈夫!?やっぱりなんだかフラフラしてるよ・・・?」
「・・・あ、優姫。・・・ごめ。零、ごめん」
身体を起こそうにも、力が入らない。
逆に零にグイっと抱き上げられれば、されるがままになるしかなかった。
「うわ・・・ちょ、零・・・下ろすべきだよ、重いし、・・・セクハラだし」
「黙れ病人が。黙って運ばれとけ」
「そうそう、零なら平気!・・・あ、私のにセクハラしないでよね!」
「セクハラじゃねぇ」
「・・・・・うぅ」
抱き上げられたまま、目を閉じた。
規則正しく刻む揺れと、零の匂いを近くに感じ、
・・・・ゆっくりと、安堵にも似た溜息をついた。
「ねぇ、零」
「・・・ん」
すぅすぅと、から寝息が聞こえ出したところで、優姫は口を開いた。
零は前を向いたまま、返事をする。
「今回・・・いつもより、酷いね。の発作」
「・・・・あぁ」
不定期に始まるの発作。
小さい頃から、ずっと・・・ずっと。
強い眠気と身体がだるくなるだけ、と本人はそれしか教えてくれなかった。
小さい頃から疑ってなんかいない。
だけど、何か・・・引っかかる。
「大丈夫、だよね」
「・・・決まってるだろ」
いつかきっと、から教えてくれる・・・・よね。
目が覚めたときには、日はすっかり沈み、辺りは暗くなっていた。
なんとなく、この時間が落ち着くのは、私の血のせいか。
「・・・・・・」
どうしても、優姫たちと同じ空間にいることが嫌だった。
たとえ、壁があるとしても。
本当に、一人になりたかった。
「・・・出よ」
窓を開け、ひょいっと外へ飛び出すと、さぁっと冷たい風が心地よく頬を撫でた。
そこからは寮から離れるように歩き出す。
足元は、
まだ、
ふらついていた。
「・・・はぁ・・・」
重い足をもう一歩動かしたところで、力尽きるようにその場にしゃがみこんだ。
膝の痛みよりも何よりも、身体のだるさが全ての感覚を奪っていた。
「・・・・っ・・う。・・・やばい」
首だけで辺りをきょろきょろと確認し、周りに人がいないことを確認した。
そして、糸が切れたようにその場にどっと倒れこむ。
「・・・・はぁ・・・・は・・っ・・・ちょっと、・・休憩」
碧く丸い月を見上げ、荒いだ息を整えた。
瞳をゆっくりと閉じれば、地面に引きずり込まれるような錯覚におちいる。
・・・頼りたくない。
心配もかけたくない。
一人でも大丈夫だって、証明して・・・・あなたを楽にしてあげたい。
もう、何も気に病むことはないよって・・・・
―― ねぇ・・・枢・・・・。
「馬鹿、・・・」
あ ぁ ・・・ お 願 い 。
そ ん な 切 な そ う な 顔 を さ せ た い わ け じ ゃ な い 。
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