どうか

どうか

今日こそは


私の目が覚めなければいい。


一生目覚めることなく、


全て忘れてしまえばいい。














―第夜―



















「おはよう、!ほらほら起きて!」


「・・・んむぅ?・・・あ、あと15分・・・」


「長ッ!? 駄目だってば!ほら学校遅れちゃうでしょ!!」



バッサと布団を剥がれ、一気に体温を持っていかれるのがわかる。

身体を丸めて、体温保存。

それでも、やっぱり起きなくちゃいけないのはわかっているから少しだけ顔をあげた。



「・・・優姫・・・今何時・・?」


「8時だ。ねぼすけ」



優姫ではない、低い声。

ゆっくりとそちらに顔を向ければ、ドアに寄りかかっている零の姿。

相変わらず無愛想なのに・・・カッコいい顔してるなぁ・・・。



「・・・女の子の寝姿見に来るなんて、いい趣味じゃない零。ついでにチューでもして私を起こしてよ」


「アホが。どこの眠り姫だ」



いつも通りの朝。

平凡な日常。

そんな素敵な毎日。



「んー・・・面倒だなぁ・・・休んじゃおっかな・・・」


「いつまでも、んなこと言ってねぇで用意しろ・・・ほらッ」



グイっと零に抱き起こされて髪の毛を梳かされる。

面倒だと言って自分のことを何にもしない零なのに、私の手伝いはしてくれる。

そんな優しい零を本当に好きだと思う。



「零は優しいよねー・・・。きっと捨て猫とか拾ってくるんでしょう?」


「誰が。優しくなんかねーし・・・猫は・・・知らん」



クスクスと笑えば、軽く零に小突かれた。

照れ隠しの下手な零。

また少し、笑えた。



「あー!まだ用意してないの!?ほら着替えなくちゃ! はいはい零は出てってねー」


「はーい・・・優姫ママ」


自分の準備をしっかりと整えた優姫はパタパタと部屋に入ってくると、零を部屋から追い出した。

私はいそいそと制服に着替え始める。

うちの制服は可愛いから好き。


「本当、零ってには優しいよねー。私にも少しは優しくしろっての!」


「えー、零は優姫に優しいじゃん? 優姫が気づいてないだけだよ」


「え?・・・・そ、そうなの?」


「うん、そうなの」


「零って無表情だからなー・・・もう」



二人で笑い合いながら、部屋を出た。

幼い頃から一緒の私たちはまるで姉妹。



「零、おまたせー」


「・・本当にな」


がもうちょっと早く起きればいいんだよー!」


「賛成」


「な、零まで・・!!」



そして私たち三人はまるで兄弟。

幼き日、出会ったあの日から・・・。





そう。

あの日以前のことは、誰も知らなくていいの。

優姫と零には知ってほしくないの。












何も・・・・何も。





































「ふにゃー・・・授業お疲れ様・・・自分」


「自分!?」


、寝てたくせに何言ってんだ」



一日の授業が終わった教室には、三人だけが残っていた。

これから私たちのもう一つの仕事・・・守護がある。

ナイトクラスの秘密がばれないよう、デイクラスを規制する・・・。

なんともわかりやすい、お仕事。



・・・大丈夫? なんかすごく眠そう。疲れてる?」


「うん・・?そうかな? まぁ眠いのは確かだけど・・・大丈夫!」


「・・・・無理すんなよ」


「うん」





ナイトクラス、それはヴァンパイアが通う真夜中のクラス。


ナイトクラス、それは・・・・・・・枢がいる、クラス。














「よし・・・今日も、頑張らねば」





















夕刻、月の寮の扉が開く




























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